ぷらこあ

ゆるふわゲームクリエイター / イベントオーガナイザーを目指してます

5月のUnity道場で「ゲームジャムにおける企画の作り方」を聞いてきました

前提

🤔この記事のコンテキスト

Unity道場 はユニティ・テクノロジーズ・ジャパン公式のセミナーで2019年5月現在は月1回の頻度で開催されています。先日 Unity道場 5月 〜ゲームジャムで役立つ超速ゲーム企画〜 に参加し、ゲームジャム における企画の作り方を学んできました。"ゲームジャムにおける" というコンテキストでお話されていましたが、業務としても部分的に活かせる部分はあるのではと思い、この記事では学びをまとめていきます。

📢登壇者

UTJ社の簗瀬洋平さん ( @yoh7686 ) が今回座学およびワークショップの進行を務めてくださいました。過去にはゲームデザイナーとして「ワンダと巨像」等のタイトルに携わり、現在UTJ社ではプロダクト・エヴァンジェリストとしてコンテンツの研究、およびUnityのアカデミックな分野に対するサポートを行なっています。

📽今回の発表について

ゲームジャム における企画の立て方について他の人に紹介するための資料として以下が公開されています。

www.slideshare.net

また後日セミナーの様子が動画として Unity Learning Materials 上で公開される予定とのことです。

座学

🎮ゲームジャムというコンテキスト

今回のセミナーは「ゲームジャム」における企画立てという前提で話が進められました。ゲームジャムとは ゲームクリエイターが集まり短時間でゲームを制作するイベント のことを指します。ゲームジャムと商業向けなゲーム開発では以下のような差異があると考えます (ここはあくまで自分個人の考えであり、適応されないケースもあります)

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👂消極的な人の意見のヒアリング

一般的なゲーム開発では企画職 (プランナー/ディレクター等) がゲームアイデアを考え、まとめることが多いですが、ゲームジャムにおいては最善手でない場合があります。上記に記載した通り、ゲームジャムでは 「面白いゲームを完成させる」ことが目的であり「期間が短い」ことが肝 となっています。

短時間でゲームを完成させるためには、各メンバー/セクションが力を発揮出来る企画である 必要があります。そのために、あまり声を発しないエンジニアやアーティストといった人も「自分の持ち味を活かすためのアイデアや実現可能性としての意見」を出すことが需要なポイントとなります。

上記は簗瀬さんも関わられた書籍になるのですが「能力はあるが主張に対して積極的でない = 消極的な人の意見をデザインの力、仕組み化によって表出し、コミュニケーションを活性化させる」ことを目的にした本であるとのことです。この思想を元に、全員でブレインストーミングを行う時間がワークショップでは設けられていました。

🎲ゲームにおける企画

今回はゲームをは「ルールとゴールが存在する遊び」であるとし、遊びを 「日常の中でしない行為を発見し突き詰める過程を楽しむ」 という風に定義しました。これに基づいて、ゲームにおける企画立ては 「プレイヤーの行う行為に対し、ルールとゴールを定める」 ことであるという風に倒しました。

遊びについて掘り下げるとロジェ・カイヨワの4分類などに行き着きますが、噛み砕いて説明しているスライドがあったので合わせて紹介します。

www.slideshare.net

🔍3つの要素から企画を作る

上記を考えやすいフォーマットに落とし込むため、3つの要素に分解します。

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上記の要素それぞれに対して、端的に伝えられるような魅力が備わっており、また相互的にシナジーがあるものを考えていきます。

メカニクスについて

メカニクスは既存のゲームジャンルから当てはめるのが一番手っ取り早く、他の人に伝わりやすいという風に感じました。ただジャンルを当てはめた時に、ジャンルが広すぎてイメージが付きにくかったり、仕様がデカすぎて作り切れないケースがあるので、その時は掘り下げる必要があります。

例えば「RPG」を取り上げるにしても、どのRPGをイメージしたらいいのか、もしくはRPGのどの要素をピックアップするのかが人によって異なります。枕詞を付ける (コマンドバトルRPG) などの工夫をすると少しマシになる気がしています。

また単一のジャンルを当てはめるだけでは、新規性に欠け、面白さを感じにくい場合もあります。その時は簗瀬さんからも提案がありましたが 既存のメカニクス/ジャンルを2つ組み合わせてみる という解決方法を試してみるのも良さそうです。

こういったメカニクスのアイデアを出せるかは自分のゲームの経験値にも依存するのですが、実際のゲーム経験以外にもUTJ大野 功二さん (@opn1) の書籍にもアイデアが詰まっていてオススメ!ということでした。

余談ですが、大野さんの以下の発表がすごく面白かったです。レベルデザイン/バランシングを考える上で頭に置いておくといい情報が詰まってます。

www.slideshare.net

ワークショップ

ワークショップは4人前後の班に分かれて行いました。

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✏️ブレスト

20分の時間を設け、先ほどの3つの要素を付箋に埋めていきます。今回は特にテーマもなく、各人がテーマを含めて考えるところからスタートしました。

🕳要素の埋め方

何もない真っさらな状態から3つの要素を合わせて考えるのは非常にハードルが高いので、1つ適当に埋めてから考えるのが楽になります。また3つの要素で上手くバランスを取ろうとすると、綺麗にまとまりすぎて既に市場にあるものと似通ってしまいがちなので、敢えて全く関係のない要素を埋めたりするのも一つアプローチがあると思います。具体的には「テーマ/表現」「メカニクス」のどちらかを埋め、もう片方を既製品にないような適当な用語を入れ「プレイヤーの行動」によってバランスを取っていくというのが個人的にやりやすかったです。

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📦投票

ゲームジャムではそれぞれの納得感、作りたい企画か、というモチベーションも大事になってきます。また時間が短いという背景もあり、ブレストで出たアイデアに投票する形で絞り込んでいきます。各人がシールを持ち、面白いと思うアイデアに対して貼っていきます。

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✨ブラッシュアップ

シールの多いものから主に以下の点を詰めていき、最終的には1つに絞り込みます。

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📣発表

各班で考えた企画を発表し合いました。

👨‍👩‍👦‍👦自分の班の発表

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上記は自分が所属した班の企画アイデアです。同じ班のもにかさん (@monicanicman) もブログにて詳細を記載しています!

meganeunity.hateblo.jp

葵さん(@pirorirori_n712)の記載した「引っ越し」というテーマから話が広がっていったのですが、評価も付けやすくて様々なジャンルと組み合わせ可能でカジュアルゲームには持ってこいな題材だと感じました。

自分は 引っ越し奉行 が好きでその紹介を行なったり、物理ゲーの中にも選択によるジレンマを組み込みたくて「家具を選択させる」というメカニクスのアイデアを出したりしました。そこからカードゲームのデッキみたいに管理するのはどうか?みたいなアイデアがメンバーから飛び出て 「その表現なら運によるリトライ性も強く担保できるし、将来的には家具以外にもトラック交換みたいなイベント系の要素もカジュアルに仕込みやすくて最高!」 とか思って一人興奮してました。最終的には (個人的には) すごい面白そうなゲームにまとまって、チームメンバーの皆さんに感謝....!!

👥他の班の発表

他の班がどういう企画をまとめたかはラズ (@Raspberly) さんがブログに記載しています。

raspberly.hateblo.jp

自分は出た企画の中では「田んぼレーシング」がテーマのインパクト/ジレンマの付け方の着想が良くて、面白いなーと感じました。普通は「田んぼ」と「レーシングゲーム」を組み合わせないので「ああ、これがテーマのインパクトのパワーか...」と。

📝まとめ

  • ゲームジャムは時間が短いので企画をするだけの人を作らない
  • チームメンバーが納得感を持って面白い企画を取り組めるように消極的な人の意見も出せる方式を取る
  • 企画を「テーマ」「行為」「メカニクス」の要素で出すことで、同じ土俵でジャッジし合える
  • 企画を「実現可能性」「テーマインパクト」「ジレンマ」の軸で検討することで、絞り込みやブラッシュアップに繋がる

💭ゲームジャム以外でどう活かすか

商業的なゲーム開発では最終的には利益に結びつける必要があるので (特にモバイル/ソーシャルゲームでは) どうマネタイズに繋げるのか、長期的な運用は可能かという視座を結びつける必要があるため、なかなかこの方法で出たアイデアだけで企画を決定し、進めるのは難しいと思います。

一方 イデアを検討する入り口チームビルディング後のアイスブレイク (誰がどういうアイデアを持っているか/好みなのかを認知する) として機能させる のは非常に楽しいものだと思いますし 「消極的な人からアイデアを組み上げることが出来る」 というフォーマットは一つ適応できるのではないかと思います。